教育

2025.04.30 14:15

【全文】東大入学式 「人権が本業」NGO代表土井香苗氏祝辞 | 信じてこそ巻き込める

写真提供:東京大学(撮影:尾関 祐治)

写真提供:東京大学(撮影:尾関 祐治)

東京大学の入学式が4月11日、東京都千代田区の日本武道館で行われ、3122名の新入生が出席した。

当日の式典から、自身が卒業生でもある土井香苗氏の祝辞全文を紹介する。

土井氏は東京大学3年生で司法試験に合格。大学4年生でアフリカのエリトリアにボランティアに行ったことがターニングポイントという土井氏は、同国の法律をつくるため、1年間、刑法の国際調査を担当する。その後ニューヨーク大学ロースクールで国際法の修士号、ニューヨーク州の弁護士資格を取得し、2009年にはヒューマン・ライツ・ウォッチ東京事務所代表に就任した。


新入生の皆様、ご家族の皆様、この度はご入学おめでとうございます。本日、皆さんが東京大学で新たな一歩を踏み出されることに心よりお祝い申し上げます。

私は、大学卒業後、弁護士を経て、ヒューマン・ライツ・ウォッチという国際人権NGOの日本オフィスを立ち上げました。

私もかつて、東京大学の新入生としてこの場に立っていました。しかし、その頃の私は、自分の歩む道について、確信を持てずにいました。

そんな私ですが、東大在学中にとった行動が、人生の転機になりました。みなさんがこの4年間をどう過ごすかの参考になればと思い、その経験を共有します。

その経験とは、「アフリカのエリトリアに、1年間行く」と決意し、実行に移したことです。

エリトリアは、アフリカの北東部に位置する小さな国で、当時アフリカで一番新しい独立国でした。30年にわたるエチオピアとの独立戦争を経て独立したばかりでした。

きっかけといえば、中学時代にまでさかのぼります。中学3年生の頃に先生が授業中に配布してくれた副教材、犬養道子さんの「人間の大地」という本を読んだのです。犬養道子さんが訪ねたアジア、アフリカの難民キャンプの過酷な現実やその政治的背景をえぐったルポルタージュでした。

同じ地球に生きる人間として、私とあまりに異なる環境に大きなショックを受けました。そして以来、私の将来の夢は、難民を助け、世界の人道危機の解決に役立つ仕事をすること、になりました。そして、現実を肌で理解するために、アフリカの「現場」に行きたい、と考えるようになったのです。

しかし周囲の反対もあり、アフリカ行きを実行に移すことはなかなかできず、大学入学時には、夢は一時凍結状態でした。しかし、大学3年生のときに起きたある環境の変化により、突如、夢が実行可能な状況になりました。そこで、「いまだ!」と決意したのです。

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