「未来の空港づくり」に向け、今の羽田空港からどんな課題が見出せるのか。また、それらを解決する事業を共創によってどう編み出すのか。terminal.0が描く、課題の解決と空港実装までの道のりを解説。
人のこころを動かす空港をつくるためには、現状の羽田空港にある課題にもフォーカスする必要がある。terminal.0の運営にあたる日本空港ビルデング(以下、JAT)は、今後重点的に取り組んでいくべき課題は、主に4つあると捉えている。
まず第1に挙げられるのが「保安検査場のストレス」だ。混雑による行列や、無機質で開放感のない内装、さらにムラのある温熱環境やわかりにくい検査手順などが挙げられる。JATは「現状の環境は旅客にとってマイナスの感情やストレスを感じやすいのではないか」と仮定している。
人のこころを動かすためには、「空間」への配慮は避けては通れない。「空間の魅力向上」も課題に連なる。JATによれば、現状の羽田空港は「無駄のないシンプルな空間だが、旅客を魅了するような特別な体験の提供ができていない」。旅客のこころに響く空間づくりを問い直し、空港体験における満足度の向上を図ることが課題だ。
感性に着目した際により重要なのが、「先端技術」を生かすことだ。技術の進化はその都度空港に実装されてはいるが、先端技術とこころの動きを掛け合わせる視点が求められる。 従業員の業務負担削減、生産性向上、旅客への新たな体験価値・サービスの提供にもつながる、こころが動くソリューションの導入が課題だと考える。
最後の課題が「DX」。インバウンド復調に伴って航空旅客数が増えるなかで、慢性的な人手不足を打開する手段が求められている。 DXは、空港にとっても不可欠な観点だ。さらなる未来を見据え、「空飛ぶクルマ・宇宙」に関する勉強会も開催。実用化されたときには、羽田空港がどのような役割を成しえるのかの仮説を考え、terminal.0の参画企業とともに備えておくことが重要だと考えている。

4つの課題を3つの機能で解決事業化までを運営がフォロー
terminal.0は、これらの羽田空港に特化した課題に対し、参画企業による実証実験を通して解決していく。空港の基幹設備や機能、航空機内設備を有した空港のモックアップを館内に整備しているほか、「連携」「実験」「発表」の3つの機能を有している。
まず、「連携」によって、参画企業同士の研究開発を促進させる。コンソーシアムや開発ユニットとい った単位での定例的な活動計画を組み、交流を密にしながら共創と研究開発を促す。
次に、参画企業による「実験」によって、実際の空港機能・旅客動線を想定した空間のなかでセキ ュリティなど安全性に配慮しながら、専門性の高い検証をterminal.0内で実施してもらう。羽田空港に隣接する立地を生かし、実際の環境確認も容易かつ、空港を熟知する企業からも意見を仰ぎやすい環境が実験を加速させるのだ。 terminal.0だけでなく、HANEDA INNOVATION CITYも必要に応じて羽田空港のテストフィールドになりえるという。こうして生まれたアイデアや共創は、コンソーシアム全体に「発表」されることで、多様な業種・職種のメンバーたちの横のつながりをさらに強める。企業担当者だけでなく定期的に一般向けのイベントを開き、実証実験に対するアンケートなども実施。企業目線だけではなくユーザ ー視点での「こころの動き」を捉えようと努めている。terminal.0で生まれたソリューションによって、こころがどのように動くのか、「感情の可視化」を実現すべく、検証に取り組んでいく。共創によって生まれた事業は、羽田空港のみならず、国内各地の空港や、世界の空港にまで実装先を見据える。事業化までのロードマップが明確なのも、terminal.0の特長となっている。
>>terminal.0 annual report 2024のダウンロードはこちらから
terminal.0(日本空港ビルデング)
https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/terminal0/
* 掲載内容は2024年度末のものです