神経変性疾患につながる脳の変化は、20代から30代頃から始まるという。脳が60代や70代になって急に老化するわけではないようだ。パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病の罹患率が上昇する昨今、これらの病気を予防するために早いうちからできることは何だろうか。
認知症を予防し、脳の健康を高める6つのステップ
専門家によれば、今日の脳の健康を改善することで、将来の脳疾患のリスクを減らすことが可能だ。アルツハイマー病と神経変性疾患の第一人者であるルドルフ・タンジ博士にメールで話を聞いた。彼は、マサチューセッツ総合病院の遺伝学・加齢研究ユニット、およびMcCance Center for Brain Healthの責任者を務める人物だ。
タンジ博士は、まずかかりつけの医師に相談し、McCance Brain Care Scoreなどを使って現在の脳の状態を確認することを勧めている。これにより、脳の健康における改善点を知ることができる。脳の健康を維持・促進し、心臓病、糖尿病、がんなどの加齢に伴う病気を予防するために、脳の健康の専門家であるタンジ博士は、脳をケアするための6つのステップを開発した。本稿では、その頭文字を取り「SHIELDメソッド」と名付けられた6つのステップと、その効果を裏付ける最新研究について紹介しよう。
「S」は睡眠(Sleep)を意味する。睡眠不足はストレスに対処する能力を妨げる。タンジ博士は毎晩7〜8時間の睡眠をとることの重要性を強調する。睡眠は認知機能低下の原因となるプラークを除去する役割を果たすが、プラークの蓄積は認知症の兆候が出る数十年も前から始まっているという。つまり、どの年齢層の人にとっても(たとえ昼間の仮眠であっても)質の良い睡眠をとることは、脳の健康を改善する可能性があるのだ。睡眠の質を高める方法について気になる人は、アメリカ心臓協会が公開する健康的な睡眠に関するガイドを見てみることをおすすめする。
「H」はストレスへの対処(Handling stress)を意味する。瞑想はストレスホルモンとして知られるコルチゾールの量を25%低下させ、ミスを少なくするという効果がある。タンジ博士は、瞑想の習慣を確立し、期待値を調整することでストレスを軽減するようアドバイスしている。そのためのヒントや瞑想のガイドについては、Benson-Henry Institute for Mind Body Medicineのウェブサイトや、アメリカ心臓協会の『Mental Health & Well-being』を見てみることを彼はおすすめしている。