製品

2025.06.12 12:30

中国のアクションカメラ「Insta360」が上場、33歳の創業者がビリオネアに

Cineberg / Shutterstock.com

Cineberg / Shutterstock.com

中国の深センに本拠を置くアクションカメラメーカー「Insta360」が6月11日、上海証券取引所に上場した。同社の株価は、新規株式公開(IPO)の初日にほぼ4倍に急騰し、時価総額は710億元(約1兆4200億円。1元=20円換算)に到達。33歳の創業者の劉靖康(リウ・ジンカン)はビリオネアとなった。

Arashi Vision(嵐視覚科技)の名で取引される同社株は、11日に上海証券取引所のハイテクスタートアップ向けの科創板(スターマーケット)に上場し、19.4億元(約388億円)を調達した。初値は182元(約3640円)と、公開価格の47.27元(約945円)から285%高で始まり、最高で188元(約3760円)近くに達した後、終値は177元(約3540円)となった。この上場は、今年の科創板における最大の上場案件となった。Insta360は調達資金を主に今後の研究開発に充てる予定という。

2015年にInsta360を創業、保有資産は推定約3900億円

「JK」のイニシャルで知られる劉は、南京大学でコンピュータサイエンスを学んだ後に2015年にInsta360を創業。2017年には、フォーブスの「Forbes 30 UNDER 30 アジア」に選出された。劉は妻とともに同社株の約26.8%を所有しており、これに基づく保有資産をフォーブスは27億ドル(約3900億円)と推定している。

「今から10年前、南京大学の学生寮を出た私たちはごくわずかな資金しかなかったが、とても大きな夢を抱いていた」と、劉は上場式典のスピーチで語った。「その後の10年で私たちの主力製品はONE XからX5へと進化した。進めば進むほど、私たちの原点にあるビジョンは明確になっていく」。

Insta360 X5(C)Insta360
Insta360 X5(C)Insta360

玩具工場を経営する父のもとに1991年に生まれた劉は、小学校5年生の頃に独学でプログラミングを始めた。高校時代には、プログラムの全国大会で優秀な成績を収め、2010年に難関の南京大学に入学を果たした。

「南京大学を志願したのはテクノロジーに強い大学だという評判を聞いたから。けれど、大学の講義にはあまり出ず、家でプログラムを書いている時間のほうが長かった。卒業して会社員になるという発想はなかった。誰かに指図されて生きるのではなく、自分の人生を生きたいと思った」と劉は、2018年のフォーブスジャパンのインタビューで述べていた。

Insta360 GO 3S (C)Insta360
Insta360 GO 3S (C)Insta360

世界中のビデオグラファーやコンテンツ制作者の間で人気を博すInsta360のコンシューマー向けの製品群には、高解像度の全天球動画(360度動画)を撮影可能なアクションカメラ「X」シリーズ、軽量でコンパクトな「Go」シリーズなどがある。同社の2024年の売上高は前年比53.3%増の56億元(約1120億円)、純利益は19.9%増の9億9470万元(約199億円)だった。

次ページ > 売上の76%は米国、欧州、日本といった海外市場から

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事