経営・戦略

2025.06.06 12:00

純利益が13倍増の英デジタル銀行のユニコーン「モンゾ」、IPOへの期待

MonzoのCEO TS・アニル(Photo by Steven Ferdman/Getty Images)

MonzoのCEO TS・アニル(Photo by Steven Ferdman/Getty Images)

ロンドンを拠点とするデジタル銀行Monzo(モンゾ)は6月2日、2025年3月期の純利益が前年の約13倍にあたる9456万ポンド(約184億円。1ポンド=約195円換算)に急拡大したと発表した。投資家は、同社の新規株式公開(IPO)への期待を高めているが、同社はそれを抑えようとしている。

モンゾのTS・アニルCEOは、記者団に対して「IPO計画について話すのは時期尚早だ」と述べた。「私たちはこの会社が将来的に素晴らしい上場企業になると信じており、その実現に向けて順調に進んでいると考えているが、現時点ではそのことに集中していない」とアニルは語った。

スカイニュースは、モンゾがモルガン・スタンレーと協力して早ければ来年前半に行われるIPOに向けて投資家とのミーティングを調整中だと報じた。ただし、同社は上場の時期や規模、取引を行う市場をまだ決めかねており、様子見の段階だと関係筋はコメントした。

モンゾの3月31日までの1年間の収益は前年比約48%増の12億ポンド(約2340億円)に達していたが、アニルはこれがモンゾの事業が多様化したことの証しだと述べている。彼によると、同社の預金は5割近く拡大して166億ポンド(約3.2兆円)に膨らんでいる。また、融資額は19億ポンド(約3705億円)と4割近い伸びを示し、税引き前利益は前年の4倍の約6000万ポンド(約118億円)に膨らんだ。

モンゾは、ここ1年で新たに240万人の新規顧客を獲得し、顧客数は1200万人を超えたというが、その3分の1がモンゾをメインバンクとして利用中という。

設立から約10年の同社は現在、英国で7番目に大きな銀行に成長しており、顧客の大多数は英国にいるが、海外展開にも意欲を見せている。モンゾは昨年、欧州市場への進出の責任者に元ストライプの幹部マイケル・カーニーを起用した。また2023年には、米国市場への拡大に向けて、ジャック・ドーシーが立ち上げたBlock(ブロック)のCash App(キャッシュアプリ)で幹部を務めたコナー・ウォルシュを採用した。

モンゾは、ここ10年ほどの間に誕生した「ネオバンク」や「チャレンジャーバンク」と呼ばれるような、既存の金融大手から市場を奪うことを望む新興企業の一群に位置づけられている。

同社は、2015年の設立当初は「モンド」という社名を名乗り、プリペイド式デビットカードを発行していた。その2年後の2017年に英国銀行免許を取得して以来、英国で最も評価額が高いフィンテック企業のひとつに成長した。同社の評価額は、昨年のセカンダリー取引(投資家や従業員が保有株を売却して現金化する取引)の際に約59億ドル(約8775億円)とされた。このラウンドには、ステップストーン・グループやシンガポールの政府系ファンドのGICが参加した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事