スタートアップ

2025.07.03 14:15

加速するセカンダリー取引、次の成長のカギ

2024年において、世界各地のスタートアップのエグジットはIPOやM&Aではなく、セカンダリー取引によるものが中心でした。実際、ベンチャーキャピタリストであるトマシュ・タンガズ氏によれば、流動性イベントのおよそ70%がセカンダリー取引だったと推定されています。

過去20年にわたり、スタートアップがエグジットするまでの期間は世界的に大幅に長くなってきています。スタートアップが以前よりも長く非上場のままでいるようになったためです。1990年代には、高成長企業が創業から数年で上場することは珍しくありませんでした。たとえば、Amazonは1994年の創業からわずか3年後に上場しています。ところが、今日では上場のハードルが上がりました。2002年のサーベンス・オックスリー法のような規制の変化により、新興の上場企業のコンプライアンスコストが増加し、その一方でプライベートマネーが大量に流れ込んだことで、スタートアップはIPOをせずとも大規模な資金調達が可能になっています。その結果、多くのスタートアップは10年あるいはそれ以上非上場のままでいる道を選ぶようになりました。アメリカでは、上場企業の数が1990年代の8000社超から、現在は4000社余りに減少しており、早期のIPOが減っていることを示しています。その代わりに、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティによる「メガラウンド」の資金調達が、かつて株式市場が担っていた成長資金の役割を果たしています。

当然ながら、初期のステークホルダーにとっての流動性は大きな課題になっています。IPOで一部の株式を売却していたはずの創業者、従業員、初期VCなどは、長年にわたって非上場企業の株を保有し続け、簡単に売却できない状況に陥っています。実際、初期段階のVCファンドの標準的な10年のファンド期間はもはや妥当性を欠き、15年程度継続するのが当たり前だと広く認識されるようになりました。アメリカでは、こうした流動性ニーズに応えるために、未上場株式のセカンダリー市場が活発に形成されています。ForgeやEquityZen、Nasdaq Private Marketといったプラットフォームが、年間数十億ドル規模のセカンダリー取引を支えています。また、大規模なレイターラウンドの資金調達にセカンダリー枠が組み込まれるケースも増えており、StripeやSpaceXが代表例です。Stripeはここ数年で複数回のテンダー・オファーを実施し、直近では650億ドル以上のバリュエーションで現従業員や元従業員に流動性を提供しました。SpaceXは半年ごとにテンダー・オファーを実施していると報じられており、上場や追加のプライマリー資金調達を行わずとも、従業員や早期投資家が一部の株式を売却できるようにしています。

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文=James Riney

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