フェイスブックの親会社メタは、米国最大の原子力発電所の運営会社コンステレーション・エナジーとの間に前例のない契約を結び、電力消費が激しい人工知能(AI)の取り組みに原子力を活用する姿勢を明確にした。これを受けてコンステレーションの株価は急騰した。
メタは6月3日、イリノイ州クリントンにあるコンステレーションの発電所が生産する全電力を購入する契約を結んだと発表した。この取り組みは、2027年から20年間にわたって続くとされている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、単一の原子力発電所が生産するすべての電力を企業が購入するのは今回が初めてのケースだという。ただしコンステレーションは2024年、ペンシルベニア州の発電所を再稼働させるため、マイクロソフトとも簡略化された類似の契約を結んでいる。
メタが結んだ契約の財務条件は明らかにされていないが、コンステレーションのジョセフ・ドミンゲスCEOはWSJに対し、この契約が数十億ドル(数千億円)規模のものであることを示唆している。
コンステレーションの株価は、この発表を受けて一時5%以上急騰して、5カ月ぶりの高値の340ドル(約4万8620円。1ドル=143円換算)に達し、時価総額は1000億ドル(約14.3兆円)を突破した。
コンステレーションは、生成AIブームで最も株価を上昇させた米国企業の1社
コンステレーションは、生成AIブームの中で最も株価を上昇させた米国企業の1社となっている。同社の株価は、2022年11月のOpenAIの「ChatGPT」リリース以降に、230%以上も上昇しており、同期間のS&P500の上昇率(51%)を大きく上回っている。さらに、アマゾンやアルファベット、マイクロソフト、オラクル、テスラなどより広く知られたAI銘柄の上昇率も上回っている。
「かつては見捨てられていた原子力エネルギーが、今では復活の兆しを見せている。AIブームから生じた莫大な電力需要と、太陽光や風力の不安定さを補う追加のエネルギー源の必要性が、その追い風となっている」と、ヤルデニリサーチ創業者のエド・ヤーデニは最近の顧客向けノートで述べていた。
トランプ大統領「原子力の時代だ」
トランプ大統領は5月23日、米国の原子力発電容量を2050年までに4倍に拡大することを目指す大統領令に署名。コンステレーションのドミンゲスCEOと並んで登場した記者会見で「今は原子力の時代だ」と語った。原子力発電は、火力発電のように二酸化炭素を排出しない一方、AIブームの到来以前は、維持コストの高さや安全性への懸念から敬遠される傾向にあった。
メタは最新の決算報告にあたって今年は生成AI関連の取り組みを強化するために、640億ドル(約9.1兆円)から720億ドル(約10.2兆円)の設備投資を見込んでいると述べていた。