組織を率いるポジションに就いた人の4割は、就任から1年半以内につまずいている。適任でなかったり、結果が伴わなかったり、あるいは来るべき変化への適応能力が低かったりするためだ。その職にうまくフィットするかどうかのリスクは、創業者から最高経営責任者(CEO)職を引き継ぐ場合で特に顕著だ。創業者のレガシー(遺産)を軽視したり主要な関係者を疎外したりする人、関係構築を怠ったりあまりに性急に動いたりする人は必ず失敗する。
フォーカスすることと信頼の構築に重点を置いたエグゼクティブ・オンボーディングの7つの段階を経ると成功への道が開かれる。戦略的に進化する体制を整えられるよう、組織の使命とカルチャーにフォーカスするといい。そして持続する信頼を得られるよう、誠実さと敬意を何より大事にしたい。
組織の使命とカルチャーにフォーカスする
アップルとグーグルではそれぞれ2回、創業者から新しいCEOが舵取りを引き継いだ。アップルではスティーブ・ジョブズからジョン・スカリー、そしてジョブズからティム・クック。グーグルでは、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンからエリック・シュミット、そして2度目はスンダル・ピチャイがバトンを受けた。
クックとピチャイは創業者の価値観と影響力を尊重しながら戦略的に組織を進化させた。クックは包括性を育んで、ピチャイは共感的なリーダーシップを前面に出して、イノベーション主導というカルチャーの中核を維持した。ふたりは創業者をカルチャーを創った人として認識し、そのカルチャーを守ることが自らの役割だと受け入れた。
対照的に、ペプシ出身のスカリーによる企業アプローチは、ジョブズの製品中心のカルチャーと衝突した。
誠実さと敬意で信頼を構築する
シュミットとクックは、透明性とコラボレーションを通じて信頼を築いた。シュミットはペイジ、ブリンと「三頭政治」体制を組んで重要な意思決定を共に行った。クックは最新情報を常にジョブズと共有し、ジョブズの情熱を活かすためにかなりの時間をかけた。
加えて、シュミットとクックは創業者と自分とで異なる強みを尊重する形でそれぞれの役割を明確にした。シュミットとクックはイノベーションと経営上の規律のバランスを取ることができた。シュミットは大胆な試みを支援し続けながら、株式公開(IPO)に向けてグーグルの経営基盤を磐石にした。クックはアップルのサプライチェーンを最適化しつつ、製品開発と強化に重点を置く戦略を維持した。
一方、スカリーは最終的にジョブズを退社させ、取締役会や従業員との信頼関係を維持できず、これが更迭される一因となった。