以下は香港在住のインタビューライター、堀江知子氏による寄稿である。
旅好きな香港人——総人口の8%がイースター休暇で出国(1日で!)
「川越って、そんなに人気があるの?」
ある週末、香港人の友人たちとテニスをしていたときのことだ。来月、日本に行く予定の友人がどこに行くかという話題で盛り上がっていた。聞けば、埼玉県の川越に行くと言う。すると、別の友人も「この前行ってきた!」と興奮して声を上げる。実はこのとき、私の心の中でふと湧いたのが、この冒頭のひと言だ。日本人の私にとっては少し意外だったのだ。
どうやら川越は、香港で人気の観光地のようだ。それだけではない。会話に出てくるのは、日本人でも「観光地」としてあまりピンとこないような「ニッチな」地名ばかり。旅好きの香港人たちの話を聞いているうちに、彼らの旅のしかたに少しずつ変化が起きていることに気づいた。
香港人にとって「買い物」と言えば、真っ先に挙がるのが旅といえる。先日も「イースター休暇」という週末をはさむ4連休があったが、その前日に香港を離れた人数は60万人 、香港の総人口(約750万人)のおよそ8%の人がたった1日で出国したことになる。香港人がいかに旅好きかを物語る数値と言えそうだ。連休はみんな一斉に海外へ「エクソダス」。そんな大量移動が当たり前の香港で暮らしていると、「連休=旅行」という感覚が自然と身についてくる。
2024年に日本を訪れた香港人は「268万人」
香港の人にとって、日本は中国に次ぐ人気の旅行先だ。日本政府観光局(JNTO)によれば2024年に日本を訪れた香港人は268万人、前年比27%増だ。筆者の周りでも、日本人の私より頻繁に日本を訪れる香港人の友人が多い。実際、訪日する香港人の70%以上が3回以上の訪日経験を持つリピーターで、日本を10回以上訪れている人も36.2%に達するというデータもある。
そんな旅好きの香港人に共通するのは「お金をかけるのだから、旅をするなら、自分だけの特別な体験をしたい」という自己充足を求める価値観といえる。
香港人の旅のニーズに応えるように、香港の格安航空会社(LCC)各社は日本の地方都市への直行便を次々と拡充している。たとえば香港エクスプレス航空は2024年末に静岡線を新設し、2025年春には福岡便を増便、小松線も復活させた。リピーターたちは、東京や京都など定番ルートは避け、「静かな穴場」を求めている。特に最近では「四国」が人気だという。香港人の旅人たちは、日本でどんな旅をしているのだろう。