経営・戦略

2025.05.20 13:30

世界的企業トップが考える「ヒットの法則」

43カ国あるフォーブス誌は、あらゆる業種の企業を取材している。ウイスキーから格闘技まで、消費者が夢中になっているビジネスを作り上げた経営者たちのインサイトを紹介しよう。


ストーリー(物語)を作る

photograph by Jamel Toppin
photograph by Jamel Toppin

フォーン・ウィーバー(47・写真)は、ジャックダニエルの元奴隷で初代熟練蒸留家であるニアレスト・グリーンの功績を称え、2017年にウイスキー「アンクル・ニアレスト」を立ち上げた。

彼女は、グリーンのように歴史から消し去られた物語をもつ元奴隷たちが無数にいることを知っていた。ジャックダニエルの親会社である、米酒造大手ブラウンフォーマンの公式記録からグリーンが除外されていたため、ウィーバーはそれを正そうとしたのだ。アンクル・ニアレストは21年以降、売り上げを3倍に増やしており、フォーブスは同社の評価額を11億ドルと見積もっている。

23年には23万人以上も訪れたアンクル・ニアレストの蒸留所は、世界で7番目に訪問者数が多く、その数はジャックダニエルに迫る勢いだ。蒸留所見学は収益性が非常に高い。150ドルのボトルを直接販売するほうが、業者を通じて売るよりも利益率が高いからだ。それでも、ウィーバーは言う。「アンクル・ニアレストで利益を得るのが目的ではありません。私は“彼ら”の家族を育てているのですから」

ユーザー体験を最大化する

シンガポールのチャンギ空港ターミナル3にあるバシャコーヒーの店舗では、コーヒーや菓子パンも購入できる。きらびやかな内装にひかれて、多くの旅行客が訪れる。バシャコーヒーは、2025年に日本初の旗艦店を東京・銀座にオープンすることを発表している。
シンガポールのチャンギ空港ターミナル3にあるバシャコーヒーの店舗では、コーヒーや菓子パンも購入できる。きらびやかな内装にひかれて、多くの旅行客が訪れる。バシャコーヒーは、2025年に日本初の旗艦店を東京・銀座にオープンすることを発表している。courtesy of Bacha Coffee

シンガポールのマリーナベイ・サンズにあるバシャコーヒーの店舗は、アルマーニとザラに挟まれ、店内の壁は床から天井まで並べられたサフラン色の四角いコーヒー豆の缶で飾られている。その目と鼻の先にあるTWGティーは、英国のティールーム様式で壁一面が黄色の茶缶で埋め尽くされている。両チェーンを所有・経営するV3グループのロン・シム会長はこう語る。

世界15か国で親しまれる高級ティーブランドのTWGティーも、各国でサロンやブティックを展開している。courtesy of Bacha Coffee
世界15か国で親しまれる高級ティーブランドのTWGティーも、各国でサロンやブティックを展開している。courtesy of Bacha Coffee

「ただのコーヒーショップやティーショップではありません。私たちは『高級ブランド』を育てようとしているのです」

モロッコ発のブランドで、100年以上の歴史をもつバシャコーヒーは、1910年に建造されたマラケシュのダール・エル・バシャ宮殿に着想を得ている。同国のモハメッド6世国王に求められてカフェを開設する計画に携わった、シムのビジネスパートナーで、TWGティー共同創業者のタハ・ブクティブは、バシャコーヒーならより大きく展開できると確信したのだ。宮殿のコーヒールームを世界展開したらどのような感じになるだろうか──。そのアイデアがバシャコーヒーの世界観につながっている、とブクティブは説明する。

「私たちは全店舗で、あの宮殿で提供される喫茶体験を味わえるようにしているのです」

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text by Chloe Sorvino, Jonathan Burgos(1P), Jemima McEvoy(2P)

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