マーク・ザッカーバーグ率いるメタは米東部時間4月29日、最新の人工知能(AI)モデルを搭載した単独のAIアプリの提供を開始したと発表した。アップルのApp StoreとグーグルのGoogle Playストアからすでに利用可能になっている「Meta AI」と呼ばれるこのアプリは、OpenAIのChatGPTと直接競合する製品に位置づけられる。
Meta AIアプリは、チャットボット機能に加え、他のユーザーがどのようにAIアシスタントを活用しているか知るための「ディスカバー」フィードを備えている。
このアプリは、メタが今月初めにリリースした大規模言語モデル(LLM)のLlama 4(ラマ 4)を使用しており、グーグルのGeminiやOpenAIのGPT、中国のDeepSeekなどの競合モデルよりもコスト効率が高いとメタは主張している。
メタのAIアシスタントはすでにインスタグラムやWhatsApp、フェイスブック、メッセンジャーで利用可能になっていた。
Meta AIアプリは、テキストと音声でのチャットや、リアルタイムのWeb検索、画像の生成・編集機能などを備えている。このAIチャットボットは、フェイスブックの投稿やインスタグラムの「いいね」の履歴などの、ユーザーがメタの製品で共有したデータを利用できる。
また、フェイスブックやインスタグラムのプロフィールをMeta AIアプリのアカウントと連携させたユーザーは、よりパーソナライズされた体験が可能になる。さらにメタのスマートグラス「Ray-Ban Metaグラス」のユーザーは、グラスとアプリの両方でMeta AIと対話でき、グラスで始めた会話をアプリに引き継げる。
メタの株価は29日の市場で一時1%上昇して554ドルをつけ、21日につけた直近の安値の485ドルからは上昇を続けている。しかし、同社の株価は年初来で7.5%安となっている。
メタのAI分野の競合であるOpenAIやグーグル、マイクロソフト、アンソロピックらはいずれもすでに単体のAIアプリを展開中だ。イーロン・マスク率いるxAIも、1月にGrokチャットボットの単体アプリをリリースした。メタのAIがかつては同社のSNSアプリ内でのみ利用可能だったのと同様に、GrokのAIも以前はX(旧ツイッター)内での使用に限定されていた。
メタの強みはSNSのユーザーベース
メタは、単体アプリのリリースに関しては他社に遅れたものの、2023年以降にフェイスブックやインスタグラムなどの自社のSNSでAIアシスタントを展開しており、その結果、AIモデルの学習に他社より多くのコンテンツを活用してきた。
メタによれば、同社のAIアシスタントの月間アクティブユーザーは昨年12月時点で約6億人に達していたという。一方でOpenAIは2月、週あたりのアクティブユーザーが4億人に達しているとCNBCに語っていた。
OpenAIはメタのようなSNSを通じた優位性を持たないが、AI市場のトップを目指す過程で巨額の資金調達を実施してきた。同社の評価額は、3月にソフトバンクグループの主導で400億ドル(約5兆7000億円)を調達した際に、3000億ドル(約42兆7000億円)に上昇した。
一方、世界一の富豪マスクが支援するxAIがテネシー州メンフィスに構えるスーパーコンピューター施設は、極めて高速にAIモデルを訓練できる能力を備えている。